10分でわかる!クラウド会計が選ばれる理由
個人的な話で恐縮ですが、私が会計業界に飛びこんだのは2010年のことです。当時は、税務署への申告こそコンピュータ上で完結(電子申告)していましたが、地方公共団体へ提出する書類はまだまだ郵送によることも多かった時代です。「クラウド」などという言葉が職場内で聞かれることもほぼありませんでした。
それから10年ほど経ち、クラウドを取り巻く状況は一変したと言って良いと思います。特に新型コロナウイルスの流行をきっかけに、テレワークが社会的に求められるようになったことで、企業において多様なクラウドサービスの導入が検討されることになりました。
総務省の調査によれば、2010年から2020年まで一貫してクラウドサービスを利用している事業者の方が、利用していない事業者と比較して労働生産性が高いというデータが公表されています。その一方で、経営資源の少ない中小企業においては、人材不足などを背景に、うまく業務効率の向上が図られていないという現実もあります。
このコラムでは、クラウドの中でも「クラウド会計」について、そのメリットやデメリット、効果的な活用方法などについてご紹介したいと思います。
出典:「令和3年版情報通信白書」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n1200000.pdf
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図表1-2-1-7 クラウドサービスの利用と労働生産性の関係(推移)
図表1-2-4-22 デジタル・トランスフォーメーションを進める際の課題
- なぜ会計ソフトが必要なのか?
クラウド会計が何かということ以前に、そもそもなぜ会計ソフトが必要なのでしょうか。
会社は、株主や債権者(金融機関など)に対して自社の財政状態や経営成績を示す必要があります。これが貸借対照表や損益計算書などの決算書です。また、法人税の場合、その納税額は法人の利益をベースにして計算します。したがって、税金を計算するという観点からも決算書を作成する必要があります。
決算書を作成するためには、日々の取引を簿記というルールに従って記録し、それを集計する必要があります。手書きやエクセルなどでも集計は可能ですが、作業効率や正確性、集計スピードの観点から会計ソフトは必須であるといえると思います。
- クラウド会計ソフトとは?
会計ソフトには大きく「クラウド型」と「インストール型」の2つがあります。クラウド型とは、インターネットを介してオンライン上で会計データを処理・保存するものをいいます。一方、インストール型とは、ソフトをパソコンに取り込んで、オフラインで会計データを処理・保存するものをいいます。クラウド会計で代表的なソフトには、マネーフォワードのMoneyForwardクラウド会計、フリーのfreee会計などがあり、そのシェアは年々増加する傾向にあります。
- なぜ、クラウド会計は便利なのか?
クラウド会計には、インストール型と比較して、次のようなメリットがあります。
① 他のサービスとの連携機能で業務効率化
クラウド会計は、金融機関の入出金情報、クレジットカードや電子マネーの利用明細、POSレジのデータなど、様々なサービスと連携して利用することができます。例えば、銀行の通帳の入力をイメージしてください。連携機能がないソフトの場合、日付、金額、勘定科目、取引の内容をすべてソフトに手入力する必要があります。他方、クラウド会計の場合、日付や金額、取引内容は金融機関の取引明細データから自動で取り込まれるので、連携機能を使えば入力の効率が大幅に改善されます。
② 自動仕訳機能の活用でさらなる効率化
①で連携する情報について、その取引をどういう科目で処理するか、登録ルールを事前に作成しておけば、その明細を取り込んだ都度、同じルールで会計ソフトが自動で処理してくれます。また、一度登録した内容はAI(人工知能)が学習していくため、使えば使うほどに精度が向上します。
③ バージョンアップや法改正に自動で対応
会計や税務のルールは毎年少しずつ変わっていきます。分かりやすい例で言うと消費税の改正です。2019年10月に消費税率が引き上げられると同時に、軽減税率制度が導入されました。これを受け、会計ソフトには複数税率に対応する機能が求められました。インストール型の場合、古いバージョンから新しいバージョンへのアップデートは自分で行う必要がありますが、クラウド会計の場合はサービスの提供会社が自動でアップデートするので、利用者は常に最新の状態で利用することができます。また、クラウド会計の場合、利用者のニーズが反映される頻度が高いため、改良のスピードが早いと言われています。
④ デバイスを問わない。スマホでも使える。
インストール型の場合、会計ソフトをインストールしたパソコンのみでの利用となりますが、クラウド会計ではデータをクラウド上で管理しているため、利用するデバイスを問いません。また、複数人でログインすることも可能で、例えば会計事務所と同じ情報を共有しながら打ち合わせするといったことも可能です。
また、コロナ禍においてテレワークが求められたように、必ずしも同じデバイスで処理を行うばかりでないことを踏まえると、デバイスを問わないことは大きなメリットであると思います。
⑤ 給与や経費精算まで、バックオフィス全体を効率化
例えば、マネーフォワードの場合、クラウド会計の契約者は、一定の人数まで経費精算や給与計算のソフトを追加料金なしで利用することができます。同じ会社のソフトなので連携度も高く、まとめて使用することで比較的低いコストでバックオフィス業務の改善を図ることができます。
- クラウド会計のデメリット
デメリットはインターネット環境に依存するところにあります。ネット環境がないと利用することができません。また、ネット環境によっては動作や処理速度が遅くなり、処理に時間がかかる場合があります。また、別の画面に移動する時に、表示の遅さが気になる場合があります。
- 会計ソフトを乗り換えてみる
今まで利用していた会計ソフトを別のソフトに変更することを「乗り換え」と言います。会計ソフトは、他社からの乗り換えを想定して設計されているため、他社のソフトやエクセルなどの表計算ソフトのデータを一括して新しいソフトにインポートすることが可能です。
消費税の軽減税率制度の導入や2023年10月開始のインボイス制度など、制度が大きく変わる時は経理業務も見直しを求められるため、そのタイミングで会計ソフトの乗り換えを検討してみるのも良いと思います。なお、インボイス制度の概要について詳しく知りたい方は、コラム「2023年10月、インボイス制度導入開始。中小企業も対応が求められます。」をご覧ください。
- クラウド会計をうまく活用できていない事例① ~機能面
過去にクラウド会計に挑戦してみたけれど、うまく導入できなかったという方もいるかと思います。機能面で言えば、大きく2つの原因が考えられます。
1つ目は、初期設定に問題があるケースです。初めてクラウド会計に触れる場合、どこから操作して良いか分からず、いろいろ試してみた結果、間違ったルールが作成されてしまって、便利さを実感できなかった事例です。
2つ目は、機能の使い過ぎです。便利な機能が多くていろいろ試してみたいと欲張った結果、処理する工数が過剰になってしまい、続かなくなる事例です。
- クラウド会計をうまく活用できていない事例② ~導入面
これまで行ってきたやり方を変えようとする場合、社内の理解を得づらいということがあります。クラウド会計を導入したいと思っている経営者の方は多いと思いますが、実際に作業する現場の方に対して、具体的に何が楽になるのか、明瞭に説明するのは難しいと思います。そのため、なかなか軌道に乗らないという事例です。
- 税理士法人かけはし にできること
弊社では「経理アシスト」プランというサービスをご用意しております。このプランでは、クラウド会計を導入したいお客様がスムーズで持続可能な利用ができるよう、最大限支援させていただきます。
マネーフォワード会計を中心に、クラウド会計の特徴を十分に理解していますので、業態や現在の経理状況などを踏まえた、お客様にとってより良いご提案が可能です。クラウド会計の導入を検討されている方は、ぜひお問い合わせください。