相続税の申告書はいつまでに提出したらいいの?

相続が発生した後に心配になるのは、「いつまでに何をしたら?」という点ではないでしょうか。相続に関して様々な手続きがありますが、ここでは、相続税の申告書の提出期限についてご紹介していきます。

★相続税の申告が必要か不要か判断するポイントについては、コラム「相続税の申告は必要?不要?判断のポイントについて」をご覧ください。

 

【目次】

1.相続税申告書の提出期限

(1)提出期限とは

(2)「相続の開始があったことを知った日」とは

(3)申告書の提出先(納税地)

(4)財産評価の基準日

2.期限までに申告書が提出できない場合のデメリット

(1)相続税の特例が受けられない

(2)罰金(ペナルティ)がかかる

3.まとめ

 


 

1.相続税申告書の提出期限

(1)提出期限とは

相続税の申告書は、いつまでに提出する必要があるのでしょうか。
相続税申告書の提出期限(申告期限)は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限までに税務署へ申告書を提出し、あわせて税金を納付する必要があります。

 

①原則的取扱い

相続の開始があったことを知った日 その翌日 10か月以内(申告期限)※
例1 5月6日 5月7日 翌年3月6日
例2 8月31日 9月1日 翌年6月30日

※申告期限が「土曜日・日曜日・祝日」だった場合は、その翌日(平日)が期限となります。

 

②申告義務者が申告前に死亡した場合(相続が連続して起こった場合)

申告の準備をしている間に、相続人のうちの一人が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。この場合は、その死亡した方の相続人が、その方が本来提出すべきであった申告書を、その死亡した者の相続があったことを知った日の翌日から10か月以内に提出することになります。事例で確認してみましょう。

 

(例)父:令和4年2月8日死亡 相続人:母と長男  長男:令和4年9月20日死亡 相続人:長男の妻と孫

申告書を提出する人 相続の開始があったことを知った日 10か月以内(申告期限)
母(父の申告) 令和4年2月8日 令和4年12月8日
長男(死亡)妻と孫(父の申告) 令和4年2月8日   令和4年9月20日

(起算日が長男の死亡日に変更)

令和4年12月8日   令和5年7月20日
妻と孫(長男の申告) 令和4年9月20日 令和5年7月20日

 

父の申告において、長男が申告を完了する前に亡くなってしまった例です。この場合、長男の相続人である妻と孫が「長男の立場」として代わりに父の申告を行います。この場合の「相続の開始があったことを知った日」は父の死亡日ではなく、長男の死亡日に変わります。

 

(2)「相続の開始があったことを知った日」とは

相続税の申告期限の起算日は、被相続人の死亡日ではなく、被相続人の相続の開始があったことを知った日となっています。知った日とは、「自己のために相続の開始があったことを知った日」です。通常、被相続人の近親者であれば、その死亡があった事実と自分が相続人になった事実をその日のうちに知り得るため、一般的には相続の開始があったことを知った日は「被相続人の死亡日」となります。

 

では、「相続の開始があったことを知った日」≠「被相続人の死亡日」となるのは、どのような場合でしょうか。

事由 相続の開始があったことを知った日
遺贈(被相続人から相続人に対する遺贈を除く。)によって財産を取得した者 自己のために当該遺贈のあったことを知った日
停止条件付の遺贈※(被相続人から相続人に対する遺贈を除く。)によって財産を取得した者 当該条件が成就した日
認知に関する裁判又は相続人の廃除の取消しに関する裁判の確定により相続開始後において相続人となった者 その者が当該裁判の確定を知った日

※停止条件付遺贈とは、条件が成就するまで効果が発生しない遺言のことです。例えば「学校に合格したら~」というような条件がついています。

 

相続税の申告期限の起算日が「相続の開始があったことを知った日」とされているのは、上記のようなケースにも対応するためです。これ以外に、親族と疎遠なために連絡を取ることができず、相続の開始があったことを知るのが遅くなるケースもあります。

 

(3)申告書の提出先(納税地)

相続税の申告書の提出先は、被相続人(亡くなった方)の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。

遺産を受け取った人の住所地を所轄する税務署ではありませんのでご注意ください。

 

(4)財産評価の基準日

相続した財産・債務の価値を計算する日は、「被相続人の死亡日」を基準とします。ここでは「相続の開始があったことを知った日」は使いません。

 

2.期限までに申告書が提出できない場合のデメリット

上記1で相続税の提出期限についてご説明してきました。ここでは、提出期限が守れなかったときのデメリットについてご紹介します。大きく分けると2つあります。

 

(1)相続税の特例が受けられない

提出期限までに申告書が提出できなかった場合、相続税の計算上の特例規定を受けることができないおそれがあります。
相続税の特例は条件が細かく決められていますので、事前に専門家にご相談ください。

 

(2)罰金(ペナルティ)がかかる

提出期限を守れなかった場合、無申告加算税、延滞税といった罰金が発生します。納税する金額が大きければ、短期間でも大きな負担になる可能性があります。

 

3.まとめ

今回は、相続税の申告書の提出期限についてご説明しました。「1年近くあるから大丈夫」と考えていても、葬儀、遺品の整理、財産の調査、資料収集、遺産分割協議、申告書の提出などを10か月で行うのは骨が折れることだと思います。「何から始めたらいいの?申告はどうしたらいいの?」などお困りの際は、是非ご相談ください。

 

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●関連法令
・相続税法第27条第1項、第2項
・相続税法附則第3項
・相続税法基本通達27-3
・相続税法基本通達27-4
・相続税法第22条
・国税通則法第10条

・国税通則法施行令第2条第2項
・民法第882条
・民法第892条
・民法第893条
・民法第985条