【ここがポイント!確定申告】#4 土地建物を売った場合の確定申告

2021(令和3)年分の所得税の確定申告書の提出期限は、2022(令和4)年3月15日です。
このコラムでは、確定申告書を作成するにあたって「ここがポイント!」という内容をご紹介します。

第4回のコラムは「土地建物を売った場合の確定申告」についてご紹介します。

 

【目次】

1.所得税はどのように計算するの?

2.所得税の確定申告が必要な人、不要な人

3.こんな場合は税理士にご相談ください!

 


 

1.所得税はどのように計算するの?

土地や建物などの資産を売ったことによる所得のことを「譲渡所得」と言います。
土地や建物を売った場合の譲渡所得に対する税金は、次の方法で計算します。

① 他の所得とは区別して税金を計算します

土地や建物を売った年に、その他に給与所得や事業所得、不動産所得など別の所得があるというケースは多くあります。
このような場合に、土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、他の所得とは区別して計算することになっています。これを「分離課税」と言います。

分離課税で計算される土地建物等の譲渡所得には、以下のような特徴があります。

・他の所得とは区別して計算されるため、例えば給与所得や事業所得が多い年に譲渡したら所得税率や所得税額が高くなるということや、逆に、給与所得や事業所得の少ない年に譲渡したら所得税率や所得税額が低くなるというようなことはありません。

・原則として、土地建物を売ったことによる損失を、給与所得や事業所得などと通算することはできません。
また、土地建物を売ったことによる所得を、事業所得などのマイナスと通算することもできません。

※マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき、住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたときにおいて、一定の要件を満たしている場合には、特例として、給与所得や事業所得などと通算できる場合があります。制度の詳細は、下記の国税庁ホームページリンクをご確認いただくか、税理士法人かけはしまでお問い合わせください。なお、令和4年度税制改正大綱において、これらの特例の適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年間延長すると記載がありますが、今後の国会審議などにより、記載と異なる規定となる場合がありますので、ご留意ください。
 国税庁ホームページ タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
 国税庁ホームページ タックスアンサー No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

 

② 土地建物の所有期間によって税率が異なります

土地建物を売った場合の税率は、その土地建物の所有期間の長短によって、2つに分かれます。

(1)分離長期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合)

所得税率 15% 住民税率5%

※この他に、基準所得税額×2.1%の復興特別所得税が課税されます。(2037年分まで)
※優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合や、一定の居住用財産を譲渡した場合には税率が軽減される特例があります。

(2)分離短期譲渡所得(譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下である場合)

所得税率 30% 住民税率9%

※この他に、基準所得税額×2.1%の復興特別所得税が課税されます。(2037年分まで)
※国や地方公共団体等に譲渡した場合には税率が軽減される特例があります。

 

なお、所有期間の計算は譲渡した年の1月1日時点で行うため、具体的には次のように判定します。

(例)2017年4月1日に購入した土地建物を、2022年10月1日に譲渡した場合
→2017年4月1日から譲渡した年の1月1日(2022年1月1日)までは4年9か月(5年以下)であるため、分離短期譲渡所得に該当

※「所有期間」とは、土地建物の取得の日から引き続き所有していた期間をいいます。この場合、相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています。

 

③ 譲渡所得は、土地建物を売った金額から取得費・譲渡費用を差し引いて計算します

譲渡所得の金額=土地建物を売った金額-(取得費+譲渡費用)

(1)取得費

売った土地建物を購入したときの購入代金・購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費・設備費を加えた合計額をいいます。

なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
また、土地建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が売った金額の5%よりも少ないときは、売った金額の5%を取得費とすることができます。これを「概算取得費」と言います。

(2)譲渡費用

土地建物を売るために支出した費用を言います。

(例)仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却時に借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用など

 

2.所得税の確定申告が必要な人、不要な人

以下のどれか1つでも当てはまる方は、原則として所得税の確定申告を行う必要があります。

  • 譲渡所得の金額がプラスである場合
  • 特例を使った申告を行いたい場合
  • 同じ年に複数の土地建物を売った場合で、トータルの譲渡所得がプラスである場合

 

3.こんな場合は税理士にご相談ください!

土地建物を売った場合の税金の計算をする上では、数多くの特例規定が存在します。

特例規定をめぐっては、次のようなケースが多く見受けられます。

  • 本来使うことができた特例規定を適用しなかったために、納税額が過大になってしまうケース
  • 特例規定を使って申告したが、後になって、要件を満たしていないことを税務署等から指摘されてしまうケース

 

このようなケースを未然に防ぐためにも、次のような場合は、ぜひ税理士にご相談ください。

(1)すでに土地建物を売っている場合

土地建物を売る前の利用状況、土地建物の所有期間などを確認し、適用できる特例規定がないかどうか検討します。

(2)これから土地建物を売ることを考えている場合

特例規定を満たすために必要な要件を満たしているか、売る前に必要な手続きがないかなどを確認し、ご説明します。
また、税金が発生しそうなケースの場合には、税金のシミュレーションを行うこともできます。

 

★ここがポイント!確定申告 ラインアップ

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#2  ふるさと納税の申告手続が簡素化されます 令和3年分から「寄附金控除に関する証明書」を添付できるようになりました。

#3  税金の納付方法は? 振替納税など7つの税金の納付方法を紹介しています。

#4  土地建物を売った場合の確定申告 (このコラムです。)

#5  令和3年分の確定申告期限は? 「簡易な方法」による期限延長申請について説明しています。

 

★土地建物を売った場合の確定申告でお困りの方、ご相談を希望される方は、税理士法人かけはし までお気軽にお問い合わせください。

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